作: ニコラ・キルン
訳: 増子 久美
出版社: 化学同人
発行日: 2021年10月15日
推定対象年齢:4歳~
街に赤・緑・白の色が目立ち始めると、クリスマスが近いのかな?と思ってしまいます。
いわゆるクリスマス・カラーと呼ばれる3色がすっかり視覚情報として浸透しているのでしょう。
さらに鈴の音が鳴り響くとワクワク感に歯止めが利かなくなり、プレゼントを期待したり誰かに何かしてあげたくなったりします。
プレゼントを贈る大人も贈られる子供も、何かをする人も何もしない人も、みんな笑顔で過ごすのがクリスマス。
オリーという少女のイヴの夜の物語『オリーとクリスマスのまほう』を紹介します。
『オリーとクリスマスのまほう』の大まかなあらすじ
クリスマス・イブの夜に「シャランシャラン」と音がするので目が覚めてしまったオリーという女の子。行動的な彼女は、起き抜けにもかかわらず外に出ていきます。
ソリでびゅ~っと滑って音のする方へ向かうと、森の中の木に鈴の付いた首輪が引っ掛かっています。
不思議な音の正体を突き止めてひと安心と思いきや、今度は「ザクッザクッ」と違う音が聞こえてきました。
ザクッザクッの正体はトナカイさんが近づいてくる足音です。
びっくりして恐る恐るあいさつしたオリーでしたが、首輪がトナカイさんの物であるとわかって着けてあげると一気に意気投合。
トナカイさんとクリスマス・イヴの夜の冒険旅行へ出掛けます。
モノクロの絵によるクリスマスファンタジーは、ほんの少し前に起こったことのような懐かしさを感じさせて、何度でも読み返したくなります。
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『オリーとクリスマスのまほう』の魅力
イラストのかわいさとモノトーン色調が魅力的な絵本です。有機的なモノトーン色調が新鮮に感じます。
そして、随所に仕掛けられたビックリ箱のような工夫。
ページをめくるごとに楽しみの増す『オリーとクリスマスのまほう』の魅力を紹介します。
躍動感あふれるかわいいイラストと効果的な小窓
トナカイ着ぐるみのパジャマなのでしょう。やわらかい角の似合うオリーという少女が、シンプルで軽妙な筆致によってとてもかわいく描かれています。水墨画を思わせる薄墨色のトナカイ着ぐるみは、静謐なモノトーンの画面の中での躍動感の象徴のようです。
ページをめくって初めて気付く小窓の配置が絶妙で、さまざまな角度から楽しめます。
作者の、読者を楽しませようという気持ちの伝わる絵本です。
クリスマスレッドとキラキラ
モノトーン画面の中でひときわ目立つクリスマスレッド。オリーの掛布団や玄関ドア、トナカイの首輪などにアクセントとして用いられています。
クリスマスレッドはクリスマスシーズンの定番カラーで、街にこの色が目立ち始めることで「あぁ、クリスマスなんだ」と準備を始める人も少なくありません。
キリスト教においては殉教者を記念し、神の霊の働きも表す色といわれています。一方で、現実的な話としては、コカ・コーラ社による1930年代からのコマーシャルカラーとの説もありますが……。
そしてキラキラッと光るシルバー。こちらもクリスマス定番カラーとして効果的に配置されています。
ともあれ、クリスマスレッドが効果的に使われているのは間違いありません。ページをめくるたびに計算されつくした仕掛けに感心して、一度めくったページを戻して裏表を確かめることもしばしば。クリスマスプレゼントに似合う楽しい絵本です。
『オリーとクリスマスのまほう』の基本情報

タイトル | オリーとクリスマスのまほう |
作・絵 | 二コラ・キルン |
訳 | 増子久美 |
発行所 | 化学同人 |
発行日 | 2021年10月15日 |
推定対象年齢 | 4歳~ |
ページ数 | 24頁 |
大きさ | 縦25.7㎝ 横25.7㎝ |
作者紹介/二コラ・キルン 増子久美(ましこひさみ)

二コラ・キルン
イギリスケンブリッジ在住。ケンブリッジ・スクール・オブ・アートで児童書のイラストを学び修士号取得。以降、絵本作家として活躍中。本書を含む「オリー」シリーズが人気を博している。
増子久美(ましこひさみ)
茨城県生まれの翻訳家。東京都内で自由気ままな生活を楽しんでいる。本作品の他にも絵本の翻訳作品が多い。中でも『海とそらがであうばしょ』は第13回ようちえん絵本大賞を受賞した。オリーシリーズでは『オリーともりのがっこう』の翻訳も担当している。