日本の古典文学の中でも最も有名な物語の一つである『竹取物語』
通称「かぐや姫」とも呼ばれるその物語は、千年以上の時を超えて現代でも愛されて、なおかつ多くの謎を含んでいます。かぐや姫を題材にした絵本は数多く出版されており、子どもから大人まで楽しめる作品が揃っています。
本記事では、かぐや姫をテーマにしたおすすめ絵本7選を紹介するとともに、物語にまつわる知られざる裏話についても掘り下げていきます。
かぐや姫のおすすめ本7選
近年ではジブリの高畑勲監督が芸術的なアニメーション映画を製作して話題になりました。お子様への絵本を始めとした関連書籍としては、下記のような作品が出版されています。
1.かぐやひめ (はじめてのせかいめいさくえほんシリーズ)
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文:中脇初枝
絵:柳田義明・ 門野真理子
発行所:ポプラ社
発行日:2018年3月
推定対象年齢:1歳~
税込価格:660円
『まんが日本昔ばなし』を手がけるアニメーション企画・制作会社の本格的アニメーションイラストを採用した親しみやすく本格的なイラストが特徴的な絵本です。巻末には児童文学者・西本鶏介氏による充実の解説が付いて、物語への理解が深まります。コンパクトで持ちやすく、紙も分厚い上製本なので小さな子供にも手に取りやすい一冊となるでしょう。
2.いもとようこの「かぐやひめ」
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文/絵:いもとようこ文/絵:ヒョーゴノスケ
発行所:金の星社
発行日:2006年8月
推定対象年齢:1歳~
税込価格:1,650円
いもとようこの日本むかしばなしシリーズの第6弾として刊行された美しい絵本です。優しくほんわかとした筆致はファンタジー小説としての「かぐや姫」とピッタリ!
いつまでも読み継いでいきたい物語が、いもとようこワールドでいっそう幻想的に広がります。。
3.かぐやひめ /ヒョーゴノスケ
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文/絵:ヒョーゴノスケ
発行所:マイナビ出版
発行日:2021年5月
推定対象年齢:1歳~
税込価格:1,518円
誰もが知っているはずの昔話なのにヒョーゴノスケ氏のイラストで、こんなにも切なく深く楽しい絵本に変るのです! 優しい色づかいと、繊細であでやかなイラストに子どもの視線もくぎ付け、大人も圧倒されます。手元に置いておきたい一冊です。
4.KAGUYAHIME/大河原健太郎
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文/絵:大河原健太郎
発行所:TANG DENG
発行日:2017年3月
推定対象年齢:3歳~
税込価格:1,650円
日本最初の小説を現代ポップアーティストが鮮やかに表現しました。「ニュー・クラシック」として、21世紀の子どもたちに届けます。最後の1頁は大人も驚く展開です。
大河原健太郎氏の絵本は他にも多数出版されているのでコレクションするのもよいでしょう。
5.だまし絵かくし絵「かぐやひめ」
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文/絵:おまけたらふく舎
発行所:旬報社
発行日:2015年2月
推定対象年齢:1歳~
税込価格:1,650円
開いてびっくりのだまし絵・隠し絵絵本です。お馴染みのストーリーが、どこから開いても楽しめる一冊、お子様との楽しい時間となることは間違いないでしょう。
6.まんが「竹取物語」/池田理代子
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文/絵:池田理代子
発行所:小学館
発行日:2019年7月
推定対象年齢:小学校中学年~
税込価格:660円
宇宙人か、月からの偵察隊か、それとも高慢な女性か、さまざまな顔を持つヒロインかぐや姫を『ベルサイユのばら』の漫画家・池田理代子が鮮やかに描き、読み応えのある絵巻となっています。
7.竹取やー御主前ぬ物語 沖縄語の「竹取物語」
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著者/編集:宮良信詳
発行所:琉球新報社
発行日:2019年9月
税込価格:2,750円
明治以来すり込まれてきた「沖縄方言」説に対し、沖縄語は日本語と姉妹関係にあり、一千年以上も使用されてきた独立した言語であると主張する著者による一冊。そのモチーフとなった「かぐや姫」も一千年以上むかしに創られた物語です。
音楽のような琉球語の美しさが、かぐや姫の麗しさを引き立てるのは間違いありません。沖縄語の可能性を広げる本として、朗読や演劇の世界でも注目されています。
「かぐや姫」を本格的に詠むなら、下記のような作品も選択肢に入るのではないでしょうか?
こうした作品は希少性が高いのでお急ぎください。
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かぐや姫の知られざる裏話
かぐや姫の物語は、日本最古の物語文学であり、世界に誇るファンタジー小説『竹取物語』です。『竹取物語』は、日本最古の物語文学として知られていますが、その起源については諸説あります。一説では、中国の伝説や仏教説話が影響を与えたと言われています。特に「月」や「不老不死」のモチーフは、当時の国際的な文化交流を反映している可能性があります。
愛の物語として知られていますが、実際は、かぐや姫に求婚する貴族たちは彼女の美しさに魅了されるストーカーであり、夜も寝ずに彼女の姿を見ようとするなど、執念深い行動を取ります。
一方のかぐや姫は、そうした男心を弄ぶかのように無理難題を押し付けて一蹴。一見、高慢ちきな女性にも見えますが、実はその背景には、自身の気持ちだけではどうにもできない複雑な事情があったのです。
『竹取物語』かぐや姫伝説にまつわる、知られざる裏話や興味深いエピソードを掘り下げてみましょう。
かぐや姫は迦具夜比売命(かぐやひめのみこと)? 神功皇后?

かぐや姫のモデル、あるいは当人ではないかとされる人物として、古事記に登場する迦具夜比売命(かぐやひめのみこと)と、第14代・仲哀天皇の后とされる神功皇后の名前が挙がっています。
迦具夜比売命とは、第十二代垂仁天皇(すいにんてんのう)に嫁いだ女性であり、父親は大筒木垂根王(おおつつきたりねのみこ)、その兄である伯父が讃岐垂根王(さぬきたりねのみこ)といい、祖母は竹野比売(たかのひめ)です。まず、父の名と祖母の名に「木」「竹」の文字が含まれています。そして伯父の「讃岐」は、竹取物語の冒頭にある「今は昔、竹取の翁といふものありけり。(中略)名をば、さぬきの造となむいひける」と、かぐや姫を引き取ったお爺さんの名前と一致します。
そしてもう1人、かぐや姫との関連が指摘されるのが、第14代・仲哀天皇の后、神功皇后です。曽祖父の山代之大筒木真若王の名前に「筒木」の文字が含まれています。
また、神功皇后の母、葛城高顙姫(かずらきのたかぬかひめ)は新羅からの渡来人である天之日矛(あめのひぼこ)の子孫といわれています。その系譜である田道間守(たじまもり)は垂仁天皇に命じられて、「非時の香果(橘)」を求めて不老不死の理想郷とされる常世国に派遣された人物です。かぐや姫が月へ帰るときに帝に渡した「不死の薬」との関係が指摘されています。
中津攸子(なかつゆうこ)の仮説
中津攸子の著書『かぐや姫と古代史の謎』では、迦具夜比売命の祖父の兄弟である崇神天皇が、葛城王朝を倒して新王朝を打ち立てたこととの関係が指摘されています。当時まだ赤ちゃんだった迦具夜比売命が苦境に立たされ、叔父である讃岐垂根王に引きとられたのではないかとのことです。
この説は「崇神天皇は開化天皇の御子ではなく、開化天皇を滅ぼし、迦具夜比売命の父・大筒木垂根王も戦死あるいは刑死した」という前提での仮説になります。
産まれたばかりの迦具夜比売命は助命され、竹取の翁こと讃岐垂根王に引き取られます。やがて成長した姫を、新王朝の天皇に嫁がせようとしたのですが、実の父を殺された王朝へ嫁に行くなど、到底納得できるものではありません。
また、かぐや姫が「罪を犯したために地上に遣わされた」とされていますが、その罪とは、本来なら殺される運命にあった彼女が助命されたことと考えることもできます。なかなか説得力のある話です。
かぐや姫のふるさと
さらに、かぐや姫のふるさととして知られる京田辺市は、南九州から移住させられた隼人族の居住地として知られています。隼人族はもともと竹細工技術に長け、月神信仰の民族だったといわれています。京田辺市に月読神社が多く点在しているのは、重要な手掛かりです。
また、古代史や系譜の研究家・宝賀寿男氏は、隼人族の原郷は中国江南の苗族やクメール族、チベット族ではないかと指摘しています。
かぐや姫に求婚する5人の貴族のうち、3名は実在
かぐや姫に求婚する5人の貴族の名は、阿倍御主人(あべのみうし)・大伴御行(おおとものみゆき)・石上麻呂(そのかみのまろ)・車持皇子(くらもちのみこ)・石作皇子(いしづくりのみこ)といいます。
このうち、阿倍御主人・大伴御行・石上麻呂は日本古代史最大の内乱といわれる壬申の乱(672年)で活躍した実在の人物です。また、残りの2人、車持皇子のモデルは藤原不比等(ふじわらのふひと)、石作皇子のモデルは多治比嶋(たじひのしま)という説が有力です。
それぞれの貴公子に対し、かぐや姫が求めた難題には下記のような意味があるとされています。
- 「蓬莱の玉の枝」は不老不死や幸福を象徴する理想……車持皇子
- 「仏の御石の鉢」は信仰や救済の精神性……石作皇子
- 「火鼠の皮衣」は実用性……阿倍御主人
- 「龍首の珠」は神秘的な力や知恵……大伴御行
- 「燕が産んだ子安貝」は母の愛情や守護……石上麻呂
ちなみに「蓬莱の玉の枝」を要求された車持皇子は嘘がばれた恥ずかしさから、山へ籠り行方不明になりました。この件から、見る機会が減ることを「たまさかる」というようになったそうです。
かぐや姫の月への帰還|仏教思想と宇宙人説

かぐや姫が月へ帰る場面には、「輪廻転生」や「解脱」といった仏教思想が見え隠れします。地上での生活を「苦しみ」と見なし、それを超越する存在として月世界が描かれている点は、当時の宗教観を反映しているといえるでしょう。
仏教思想
かぐや姫が月へ帰る場面には、「輪廻転生」や「解脱」といった仏教思想が見え隠れします。地上での生活を「苦しみ」と見なし、それを超越する存在として月世界が描かれている点は、当時の宗教観を反映していると言えるでしょう。
かぐや姫宇宙人説
「竹取物語絵巻」には、まるでUFOのような雲に乗ってかぐや姫を迎えに来ている場面が描かれています。そして、それを見た兵士たちは体がしびれて動けなくなり、あらゆる扉が開いて、あっという間にかぐや姫が連れ出されてしまうのです。
これは、宇宙人による「アブダクション(誘拐)」と似た現象です。「何かをしようとしても、体が停止状態になって動かなくなり、宇宙人たちの好きなようにされてしまう」という報告は少なくありません。
竹から産まれたわずか10㎝足らずの赤ちゃんが、数カ月の間に地球人の大人のサイズになったことも、かぐや姫が宇宙人だと考えれば、すんなり腑に落ちます。
かぐや姫が月に帰った後のエピソード
竹取物語では、かぐや姫が月に帰る際に天女が渡した羽衣を着ると、地上の記憶をすべて失います。地球での思い出やおじいさん、おばあさんを大切に思う気持ちも忘れてしまうのです。月で幸せに暮らすために古い記憶はない方がよいのかも知れません。しかし、別の見方をすると、地球での役割が終わったとも考えられます。果たしてその役割とは何だったのでしょう……?
一方、かぐや姫に最後に求婚した帝は、かぐや姫から「不死の薬」をプレゼントされます。けれども「かぐや姫がいないのに、不死になっても意味がない」と日本でいちばん高い山の頂上で焼かせます。日本でいちばん高い山とは、そう、そこから富士(不死)の山と呼ばれるようになったということです。
【まとめ】深すぎて何度でも読み返したくなる「かぐや姫」
かぐや姫の物語は、単なるおとぎ話ではなく、さまざまな解釈や裏話が存在する奥深い物語です。これらの裏話を知ることで、かぐや姫の物語をよりいっそう楽しめるだけでなく、もしかしたら日本人のルーツを探ることができるかも知れません。繰り返し読み継ぎ、世界に広めたい昔話です。
日本文化を象徴する物語として愛され続けてきた「かぐや姫」。今回ご紹介した絵本7選は、それぞれ独自の視点からこの名作を再解釈していますので、多様な楽しみ方ができるでしょう。
ぜひ手に取ってみてください。
かぐや姫に関する新しい情報をご存知の方がいらっしゃいましたら、ご指摘くださると幸いです。今後も「かぐや姫」への新しい視点を発見し次第、随時更新していきます。よろしくお願いいたします。